2012/05/12

中啓と鎮扇

能のワキ方の装束や小物を、これから皆様に少しずつご紹介してまいりたいと存じます。



第一回  中啓と鎮扇


能の扇の種類は「中啓(ちゅうけい)」「鎮扇(しずめおおぎ)」、中国の物語の主人公が持つ「唐団扇(とううちわ)」などがありますが、ワキ方は中啓と鎮扇の2種類を持ちます。


扇は中国の団扇に対し、平安時代に日本で作り始められた。あおぐ道具、また儀礼用の持ち物であったが、次第に芸能でも持たれるようになった。


演技の面からみても、素手よりも扇を用いて所作を行うほうが、意志がはっきりと伝わる。
表現を強調したり、「杯(さかずき)」や「太刀(たち)」などに見立てて型を行う場合に重要な必需品である。


中啓は閉じた時でも先が銀杏型に開いているもの。鎮扇は一般的な形であるが、「素襖上下(すおうじょうげ)」の扮装の時のみ持ちます。地謡、後見、囃子方などの装束を付けない役は、鎮扇を持ちます。


扇の骨には「白骨」「黒骨」があります。
「白骨」は竹の素地のままに見える骨で、「黒骨」は黒塗りの骨です。ワキ方が「黒骨」の扇を自前で持つことは原則ありませんが、「班女(はんじょ)」という曲は、ワキが持つ扇もシテ方が用意するため、例外的に持ちます。


上は中啓、下は鎮扇

紅白牡丹
「鷺」のワキなどに持つ。



神扇(かみおおぎ)
ワキ能の時に持つ。

表絵は桜の下にいる四仙人を描く。
上写真は裏絵の桐と鳳凰の図。




波に舞鶴の絵
武士出立で紅入りの着付を着た時に持つ。



雲に小松
主に大口(おおくち)という

大きな袴をはいた僧が持つ。

流儀の「道成寺」の決まり扇です。




月に立浪
流儀の「猩々乱(しょうじょうみだれ)」の決まり扇です。



山伏扇
芭蕉(ばしょう)の葉を描いています。


男扇
羽衣などの漁師や、武士でも紅の入らない着付を着た時に持つ。


 

七賢人 墨絵扇
着流し僧や「羽衣」のワキツレなどが持つ。

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